自分の分身AIを作りたいときは、口調を似せる前に、何を任せるか、何を根拠に判断するか、どこで本人へ戻すかを決めます。「私らしく答えて」だけでは、どの回答を直せばよいかが曖昧になるためです。
ここでいう分身AIは、自分の教材や判断基準を使って質問対応を補助するチャットです。本人の意識や判断力をそのまま複製するものではなく、顔・声を再現する動画アバターとも異なります。この記事では文章講座の相談対応を例に設計します。
1.まず「よく説明している一つの仕事」を選ぶ
僕が会員向けのGPTs(カスタムGPT)を設計したときは、要件を整理するための質問を7問に区切り、3問目で途中整理し、最後に成果物を返す形にしました。何でも本人の代わりに判断させるより、会話の進め方と終わりを決めた設計です。指示を見直した実例でも、この考え方を紹介しています。
分身AIも、最初は「講座の見出し添削を手伝う」のように一つへ絞ります。本人しか判断できない契約や例外対応まで、まとめて任せる必要はありません。
| 任せる仕事 | 渡す材料 | 本人へ戻すこと |
|---|---|---|
| 教材の用語を説明する | 教材・用語集 | 教材にない解釈 |
| 見出しの改善案を出す | 判断基準・修正例 | 公開する表現の最終判断 |
| 相談内容を整理する | 確認する質問・まとめ方 | 個別事情を踏まえた決定 |
2.「自分ならどう見るか」を順番にする
次は架空の文章講座で使う判断基準の例です。本人の非公開指示や会員教材の転載ではありません。
見出しを確認する順番
1. 本文で一番伝えたいことを確かめる。
2. 見出しがその内容を伝えているかを見る。
3. 本文にない効果や数字を足していないかを見る。
4. 初めて読む人が意味を理解できるかを見る。
5. 修正する場合は、理由を一つ添える。
「わかりやすく、親身に」のような雰囲気だけでなく、何から確認し、何を優先するかを書きます。判断が割れる例も考えると、自分が暗黙に使っている基準が見えてきます。
材料の整え方には、AI Crewの前提知識の渡し方が参考になります。毎回同じ情報と、その相談でだけ必要な情報を分けて渡す考え方です。
3.回答例は「答え+理由」で用意する
よく使う言い回しだけを集めると、口調は似ていても判断の根拠が分からなくなります。次のように、入力・回答方針・理由を一組にします。
| 項目 | 練習用の例 |
|---|---|
| 相談 | 初心者向けの記事に「必ず集客できる」と付けたい |
| 回答方針 | 本文で根拠を説明できる表現へ変える案を出す |
| 理由 | 本文にない成果の保証を見出しへ足さないため |
| 追加で聞くこと | 記事で実際に紹介している内容は何か |
これは分身AIが実際に返した回答ではなく、期待する判断を伝えるための設計例です。自分の事例を使うときも、第三者の個人情報や非公開の相談内容をそのまま入れず、利用できる範囲の材料で作ります。
株式会社AI OrchestraのSkillsとナレッジの違いでは、作業の手順と判断材料を分けています。分身AIでも「見る順番」は指示へ、「参照する事実や例」は資料へ分けると、どちらを直すか整理できます。
4.答えない範囲と、本人へ戻す言い方を決める
次の短い指示を土台にし、角括弧を自分の用途へ置き換えます。
あなたは[名前・講座名]の教材に沿って、相談の整理を補助するAIです。
本人そのものとして発言せず、判断を補助するAIとして答えてください。
[対象の仕事]について、登録した判断基準の順に確認してください。
提案には、根拠と理由を添えてください。
教材で確認できないことは、確認できないと伝えてください。
[本人へ戻す内容]は決定せず、確認すべき点を整理してください。
口調は[短い文で丁寧に、など]とします。
例えば契約条件を聞かれたら、勝手な条件を答えるのではなく、確認先と質問事項を示す設計にします。実在しない窓口を作らないよう、案内先も本人が確認します。
こうした指示は、誤回答や情報の流出を完全に防ぐ仕組みではありません。共有範囲や利用条件の設定も別に確認します。
5.同じ質問へ本人も答え、違いを比べる
完成の判断は「それっぽい口調になった」だけで済ませず、本人が同じ相談を見た場合と比べます。
- 通常の質問:自分と同じ材料・優先順位を使っているか。
- 情報が足りない質問:確認したい点を尋ねられるか。
- 対象外の質問:本人へ戻す範囲を越えて決定していないか。
違いがあれば、口調・判断基準・参照資料のどこに原因があるかを分け、一つずつ直します。よくできた回答だけでなく、困った回答も手元に残すと次の点検に使えます。
判断基準を用意したら、チャットとして試す
AIチャットつくーるでは、名前・指示・知識を設定して専用のチャットを作れます。具体的な入力と確認の順番は、教材1本からチャットボットを作る手順にまとめました。まず自分だけで試し、公開範囲や利用条件を確かめてから相手へ渡します。
最初の目標は、本人の代わりに何でも判断することより、自分が繰り返し説明している一つの仕事を、確認しながら任せられる形にすることです。

